1976年、コンゴ民主共和国で初めて発症したエボラ出血熱は、アフリカ中央部を中心に2012年までの36年間に、20数回発症していますが、100人以上の患者が出たのは7回あり、そのうちの4回はコンゴ民主共和国で、スーダンが1回、ウガンダが2回となっています。患者数の合計は1898人、死者は1261人で、致死率は66%を超えています。
その他の場合も、数人から、数十人単位で発症しており、そのほとんどが先の3カ国を含めて、ガボン、コンゴ共和国の5カ国に集中しています。これを見ても解るとおり、当時の流行は中部アフリカに限られた特殊性が感じられます。
この5カ国では30数年の間に予防ができなかったのでしょうか?
そもそも、エボラ出血熱の感染はどのように起きたのかを明らかにしましょう。それが明らかにならなければ、予防はできないことになります。
問題は、今でこそ、診断技術やワクチン、薬の開発が進んでいますが、当時はそのような体制がなかったので、治療の主流は対症療法で、予防までとても頭が回らなかったようです。
予防には、感染経路と感染の機序を突き止めることが一番。
感染の経路は、多くは発症している患者さんの体液との接触がほとんどで、血液、唾液、排泄物などに触れることによって、皮膚の柔らかい粘膜や、ちょっとした傷口からウイルスが侵入し、気付かないうちに感染しているのです。
それに、エボラウイルスに汚染された医療器具や、身の回り品にも十分注意を払う必要があります。ただし、呼吸器系の病気に見られるように、空気感染はしないので、エボラ出血熱の有病者の体液・血液に触れなければ、心配することはありません。
文化や習慣がネックに。
エボラウイルスは動物由来のウイルスで、人的被害を及ぼすようになったのは、中央アフリカで活動しているオオコウモリがエボラウイルスに感染し、それにサルや牛も感染した状態で、それらの死肉や生肉に接触した人間が、周辺にいる人間に対して媒介・接触した結果、広まったと考えられています。
特に、2014年の西アフリカの大流行は、原住民の習慣が感染拡大に大きな影響を及ぼしており、それに相俟って予防知識の普及遅れが原因になっています。具体的に言うと、エボラ出血熱で亡くなった死者を弔う際に、一族、家族全員が、慰めのために死者の身体全体に触れることから、先にも記したように体液塗れになり、死者から人へ、そして、また人へと感染拡大が一気に爆発したわけです。
予防には、正確な知識が求められる。
まずは、感染者の周りには近づかないことが一番。どうしても近くに行かなければならない場合は、絶対に接触してはいけません。
それから、石鹸、アルコールを含むハンドジェル、消毒薬、マスク、手袋なども有効ですが、患者本人は当然のこと、患者の身の回り品に、体液、血液、唾液がついていないか、十二分に注意を払います。
発症しなければ、体液、血液にウイルスは発現しませんので、過剰な心配はいりません。ようは、エボラ出血熱がどのような病態を持ち、感染する仕組みはどのようになっているのか、正しい知識を身につけ、そして、何よりも大事な予防法は、患者には近づかないことが一番です。